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HATTORI食育クラブ 食育通信No.50

対談

今年を「ハラール」元年にしよう!
他国の食習慣について意識を高めて、真の「おもてなし」を

服部栄養専門学校
校長/医学博士
服部幸應

「ハラール」とはどういう意味ですか?

服部
「ハラール(または「ハラル」)」は、アラビア語で、日本語に訳すと「許されるもの」「合法的」という意味です。「ハラール」のものは、神に許された清浄なものということだそうです。そして、イスラム教徒が口にできる「ハラール食品」は、イスラム教の戒律で許されたもので、それは、安全、無害で人を酔わせない、健康を害さないものということになります。

ハラール食しか口にできないイスラム教徒は、
世界にどのくらいいるのでしょう?

服部
イスラム教は、世界三大宗教のひとつで、信者の人口は、1位のキリスト教に続き2位。swiss replica watches
ちなみに、3位はヒンズー教です。世界の人口約70億人のうち16億人がイスラム教徒だそうです。
イスラムというと、アラブの国々を思い浮かべますが、東南アジアのマレーシアはイスラム教が国教ですし、インドネシアもイスラム教徒が大半を占めています。
近い将来、世界の3人に1人はイスラム教徒になるとも言われているんですよ。

日本ではハラールへの理解は進んでいるのでしょうか?

服部
日本ではイスラム教徒に出会う機会がまだ少ないですね。
これがハラール食品に対する理解が遅れている大きな理由になっているのでしょう。
欧米のファストフード店に行くと、ハラール認証されたハンバーガーが普通に売られているくらいポピュラーなことなんですよ。

食べてもよいものは「ハラール食品」。
では、食べてはいけないものは?

服部
禁止されているもの、イスラム教の神が許していないものは「ハラーム」(または「ハラム」)と呼ばれています。アラビア語で「ナジス」と呼ばれる不浄のもので、こういったものを口にすることはイスラム教徒の人にとっては戒律を破るのはもちろん、魂が汚れてしまうと感じ、心のダメージを受けるということなのです。

イスラム教徒が食べてはいけないものは?

服部
一般的には、豚肉やアルコールを一切口にできないということは知られていますよね。
でも、そう単純な話ではないのです。牛や鶏、羊でも、戒律に従ってイスラム教徒が祈りを捧げ、と畜をしたものでないと食べてはいけません。
また、調理器具や冷蔵庫、時に調理場まで、普通の食べ物を扱う際に使用するものと別にしないといけません。

肉料理は特別な食肉処理などが必要なので、対応が大変そうですが、
日本料理の魚や野菜料理なら問題ないように思われますが…

服部
魚や野菜など主食材はいいとしても、みりんは、アルコール調味料であるためハラームです。(※しょうゆとみそは、本醸造で自然発酵で生じるアルコールであればハラール)
ですので、イスラム教徒の方がせっかく日本へ旅行にきても、食事は自炊をしている人が多いと聞きます。
お酒を飲んでいる人と同じ場所にいることも一般的に好まれない、厳密にはハラームにあたるし、公私では、男女は席が別々。肌を露出した女性もよしとされていません。ですから、居酒屋などに入ることもできないわけです。

マレーシアやインドネシアからの留学生は増えているようですし、
これから交流する機会は多くなりそうですが、
家に招く場合など、どのようにおもてなしをしたらよいのでしょう?

服部
イスラム教の戒律に基づいている「ハラール認証」のマークがついている食品を選び、できれば新しい調理器具で料理したものを出しましょう。
「ハラール認証」は国や団体によっていくつか種類があります。ハラール食品を扱うお店へ行けば、肉はもちろん、製法を工夫したり、アルコール添加を含まないしょうゆやみそは入手できるようになりました。
マレーシアは戒律が特に厳しいそうなので、「ハラール認証」マークの有無をチェックしなければなりませんが、誠意を尽くすことが真の意味での 「おもてなし」ではないでしょうか?

東京オリンピックに向けて日本の外食産業や飲食店の方々は「ハラール」に対応する準備を整えているのでしょうか?

服部
まだまだ、これからですね。今年に入って、講習会など開いてプロの料理人たちにこういう話をしても、遠い国の話と思っている方も多いようです。
また、「そんなに厳密に作らなくても、ハラールの食材で作ったと言えば分からないのでは?」と軽率な発言をする人もいます。このような感覚はもってのほかです。
宗教問題は、国際問題にも発展しかねない可能性をはらんでいるのですから。「なんちゃってハラール」を出すような失礼は絶対にしてはいけません。 日本の恥でもあります。「ハラール」はもとより、さまざま宗教とその食に対する知識を日本でも浸透させなければ、真のグローバル化はない、と私は危機感すら感じています。

意識を高める対策は?

服部
今年を「ハラール」元年と銘打って、広くあまねくアピールしていくことですね。政府、学校など公的機関にも頑張っていただきたいです。
服部学園でも、今年からプロの料理人を対象に「ハラール調理セミナー」を実施しています。また、学園のカリキュラムの中でも、「ハラール」をはじめ宗教食の講義を必須科目にしていきたいですね。
日本を訪れる外国人観光客が昨年は1000万人を超えましたが、6年後の東京オリンピックでは2000万人を超え、そのうち約600万人がイスラム教徒と言われているんですから。
「お・も・て・な・し」をプレゼンテーションした日本が本当にホスピタリティー精神あふれるよい国と思ってもらうには、やはり、まず、「ハラール」への理解を深めることが重要ですし、外食産業にとっては、大きなビジネスチャンスでもあると思うのです。

ビジネスの世界では、「ハラール」の認識度は高いのでしょうか?

服部
中東アラブ諸国は石油という生活に欠かせない資源を一手に握っている重要な国です。マレーシア、インドネシアなどイスラム教が増えるアジアの国も、貿易、建設など日本企業との関わりはますます深くなっていくでしょう。そんな中、接待をする、されるなど飲食の席を一緒にするには、相手の宗教観や食習慣を把握しておくことはビジネスの観点からみても必然のことですし、国際マナーだと思うのです。商社などでそういった地域を担当されている方は知識を持って接していると思いますよ。

「食育」の観点から「ハラール」をどう捉えていけばよいでしょう?

服部
お子さんも含め、ご家族と、人種や宗教など日本人とは異なる背景を持つ人々の生活習慣をもっと話題にしてほしいですね。
イスラム教徒の留学生も増えていますし、逆にお子さんが将来留学するという時に備えて、「ハラール」だけでなく、ユダヤ教には「コーシャー」という厳しい食の戒律がありますし、ヒンズー教もしかり。東京オリンピックに向けて、お子さんの自由研究のテーマにしてもよいのではないでしょうか?

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