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HATTORI食育クラブ 食育通信No.44

対談

震災からの復旧・復興へ

品田 英明(写真左)
味の素株式会社 執行役員
食品事業本部 家庭用事業部長

服部 幸應(写真右)
服部栄養専門学校 校長/医学博士

震災直後の活動

服部
味の素様は、昨年3月11日の震災後にさまざまなご活動をされたとうかがっています。
品田
はい。まずは救援物資を送らなくてはならないと。すぐに用意ができるおかゆやカップスープ、飲料等、62万食を行政を通じてお送りしました。また義援金をNPOの団体へお渡しし、従業員からはカンパも募りました。さらに味の素グループらしい活動ができないかと検討したところ、仮設住宅での調理の問題が浮上しました。そこで調味料を中心としたセットを社員がボランティアでつめ合わせ、お配りする取り組みを致しました。メッセージを手書きで入れ、5万2千セットを岩手県、宮城県を中心にお渡ししました。
服部
混乱した中、飲料や食料の供給が何より必要でしたね。我々はそこまでの規模では難しいのですが、震災後の3月20日、炊き出しをするために宮城県へ向かいました。しかし途中の土浦から、がれきの山で進むことができなかったのです。急きょ茨城県の被災された方へ、カレーライスや豚汁、おむすびの炊き出しとなりました。
品田
茨城県も報道は少ないものの、影響が大きかったですね。
服部
そうでしたね。道が通じた後、6回ほど宮城などの被災地を、料理人を連れてたずねました。
品田
孤立したところは大変だったでしょうね。そして持病を持たれた方、小さなお子さんなど、個人差のケアが難しかったようです。
服部
均一に配ることを重視するより、臨機応変に対応しないといけません。仕事がなく困った方も多数いらっしゃいましたから、義援金の使い方も今後日本の課題ではないでしょうか。今回の被災地は漁業関係の強いところでしたから、日本の食糧問題としても、早急に漁業を助けなければなりませんでした。

被災地にコミュニティを

品田
支援させて頂く中で、仮設住宅における栄養状態の問題がわかりました。簡単にいうと、野菜不足で炭水化物にかたよってしまう状況です。料理をする頻度も少なくなっていました。そこで少しでも貢献できることはないかと、健康栄養セミナーという形で食と語らいを通じた「心と体の健康作り」をテーマに活動を始めました。地元の福祉協議会、栄養士会と協力して拠点を置き、グループからも栄養士などを配置しています。現在は宮城県と岩手県中心ですが、4月からは福島県でも行う予定です。
服部
栄養のかたよりや、アルコール中毒になってしまう方など、色々な生活の問題がありましたからね。
品田
そうですね。震災後、人と集まってワイワイするコミュニティがなくなってしまいました。集まって話をして、一緒に料理をして、一緒に食べるという、人とつながれる場所をご提供したいと考えています。調理器具セットを持ち込んで、集会所をキャラバンで回る活動を、ネットワークをつくりながら今後3年ほど進めていく予定です。
服部
すばらしいですね。人とつながる場、一緒に食卓を囲む場は、かけがえのないものですから。宮城県の石巻などへ行ったときも大変な惨状でしたが、人々が「家族っていいな」とおっしゃった時、ふだんは忘れてしまう絆を思い出させられました。
品田
「絆」は震災後のキーワードとなっていますね。

震災前後の消費活動「内食回帰」

服部
震災の前後では、消費者の方の意識は変わったのでしょうか。
品田
もともと日本人は賢い消費者ですが、 震災後はより、量より質を重視する傾向となっているようです。大切なものが何であるかを実感されたこともあるのでしょう。震災後2ヶ月の調査を見ると、家族のために料理を作りたいという人が4割近く増えています。外食はハレの日に、そのほかの日は家で食事をしようという内食回帰が潮流としてあります。
服部
だんらんの機会が増えるといいですね。
品田
そうですね。また、今回の震災では放射能の問題が重なり、商品選びの時に品質だけでなく、どこで作られたのか等の表示を重視する傾向があります。私どもは日本で100年以上仕事をさせて頂いており、その信頼をベースに、調味料を中心により良いものをご提供できたらと考えています。

地球の循環にそったライフスタイル 2012年の展望

服部
現在世界では、環境と共生する3つのキーワード「エコロジー」「持続可能性」「生物多様性」をもとに、すべてを設計しています。ロケットも、電話も、食品も、料理もです。我々は経済活動とともに地球に影響し、お金を得て、さらに大変な人災を起こしてしまいましたから、地球に対して補償をしていかないといけません。
品田
ただおいしく楽しいだけではなく、先生のおっしゃった3つのキーワードの視点を持ち、ライフスタイルとあわせて商品をご提案しなくてはなりませんね。できるだけ早い段階で反映させたいです。
服部
楽しみにしています。そのほか、今年の展望はいかがでしょうか。
品田
やはり今回の震災では、家族や友人の大切さを実感しました。人間の絆を少しでも感じ、心を豊かにしてくれるのは食卓です。簡単で短い時間の調理だけれども、豪華に見えるメニューのご提案、また出汁など日本の食の伝統の素晴らしさもあわせてお伝えしていきたいと考えています。
服部
日本が元気になるよう、ぜひ一緒にがんばりましょう。本日はありがとうございました。

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