食育に関する情報・食育の実践なら 【HATTORI食育クラブ】

メディア

HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.21

月が語る

最近月を見上げていますか?
月は人々の感情をかきたて、インスピレーションをあたえ続けています。一竿風月、花朝月夕、花鳥風月、月白風清、光風霽月といった故事成語、「天の海に雲の波立ち月の船星の林にこぎ隠る見ゆ」といった数々の月にまつわる歌もあります。

月は私たちにさまざまな影響をあたえています。
海の満ち干は月の引力、太陽の引力、地球の遠心力が関わっていることはよく知られています。
月の形は月・太陽・地球の位置関係を示す記号であるといえ、かつて人々は月から多くの情報を得ていました。満月と新月は「大潮」に、上弦・下弦の月は「小潮」になる、といったことなどです。
医学博士、精神科医であるアーノルド・リーバーなどが提唱する、バイオタイド理論というものがあります。生体内の潮汐のことで、生物の体は大部分が水分で出来ており、海の満ち干のように影響を受けているという理論です。満月の前後に体がふくれている感じを受けたことはありませんか。体内の水分バランスによって体調も精神も左右されるということは、ごく微量の電解質などで保たれている生体の構造を考えると想像にかたくありません。
また満月時の珊瑚の産卵はよく知られているところで、人間も満月や新月のときに出産が増えるという研究結果が報告されています。珊瑚からは月の光に反応する遺伝子が発見され、人間など他の生物もその遺伝子を持っており、体内時計に関わっているといわれています。

さて、本日は旧暦の何月何日かご存知でしょうか?
現在多くの国で使われている暦は太陽暦ですが、旧暦とは、飛鳥時代から明治5年まで1400年もの間使われてきた太陰太陽暦のことを指し、とくに江戸時代に改定された天保暦を現在の「旧暦」として踏襲しています。
太陰とは月のことであり、太陰太陽暦の前に使われていた太陰暦は、月の動きにあわせた暦です。月の周期は約29.53日で、12ヶ月たつと太陽の周期と11日のずれが生じます。季節は太陽が司るのでずれを修正するために、太陽の周期を24等分した冬至や春分などの二十四節気や、ずれた日を調整し1年を13ヶ月とする閏月を採用し、太陰暦から太陰太陽暦に代えられたのです。朔(新月)がその月の第一日目、ついたちとなります。ついたちは「月立ち」がなまってできた言葉です。三日月が見える日が3日、上弦の月は7日前後、満月は15日前後といったように旧暦の日付は月の形に呼応しています。満月を2日後にひかえた本日は、旧7月15日です。

旧暦は月・太陽・地球の位置関係が考慮され、冬至をふくむ月を11月、春分をふくむ月を2月とするようなルールや閏月を挿入するタイミングにルールがあり、閏月が夏に入るとその年は夏が長くなり暖冬になるなど、日付と季節がよく合います。海の潮や魚のバイオリズムが大きくかかわる漁業はもちろん、天候の予測が大切な農業にも太陰太陽暦は重宝されていました。
旧暦と新暦のギャップは行事によくあらわれています。新暦のひなまつりでは、まだはまぐりは食べごろではありません。旧暦の3月3日頃においしくなります。中秋の名月の旧8月15日は今年は新暦9月14日、満月は9月15日です。暑すぎず寒すぎず、澄んだ空気にくっきりと浮かぶ名月の鑑賞は、旧暦でなければ成り立たない行事のひとつです。来月はぜひお月見を楽しんでください。

日本で使われていた太陰太陽暦は、現在北京オリンピックが行われている中国から渡ってきました。紀元前1600年頃に興った殷の時代にすでに使われていたそうです。
天体の位置関係をみる太陰太陽暦や、0と1であらわす二進法のように万物を相対的に「陰」と「陽」にわけ解こうという陰陽説、木火土金水で万物の関係を示そうとした五行説など、自然を観察し、関係性を理論化することに長けていたようです。関係性を重んじる考え方は食べものにももちろん及び、医食同源の中医学や薬膳、そこから発展していったあらゆる料理の重要な位置を占めています。そして海を渡り、日本の文化に多大な影響を与えました。

中国をはじめ、さまざまな国との交流や、自然との関わりがあって今の私たちのくらしがあります。
太古から遺伝子が月影を読み1400年の時を月とともに過ごしたように、月が語るあらゆる示唆に気づけたなら、月や、太陽や、地球や、自然や、食べものや、国や、人との関係性を感じ、もっと豊かで知恵にあふれたくらしができるかもしれません。

中国料理、陳麻婆豆腐の由来

その昔、中国・成都で豆花飯(ドウホアファン)という、フルフルの豆腐をご飯にかけて辛いタレで食べる料理を売っていた陳というお婆さんがいました。
その陳婆さんの店の前に肉屋があり、そこで肉を買った労働者が「この肉を炒めて何か料理を作ってくれ」と頼みました。
陳婆さんは肉を細かく切って炒め豆板醤で味をつけ豆花も入れて料理をすると、それがとても美味しくて評判になり、以来多くの人が遠くからわざわざその料理を食べに来るような名物料理になったそうです。
「麻」は中国語で「アバタ」の意味。陳婆さんの顔にはアバタがあり、その名物料理に使っている花椒(ホワジャオ)(山椒)の粉を陳婆さんのアバタに見立て「アバタのある陳婆さんの豆腐料理」という意味の陳麻婆豆腐と名づけられました。

バナースペース