日本の将来は明るいと思いますか?という読売新聞社のアンケートによると、実に70%以上の若者が「どちらかといえば暗い」「暗い」と答えています。財団法人経済広報センターのアンケートでは、29歳以下の世代の環境問題への意識や行動は他の世代に比べて低く、地球温暖化の原因とされるCO2の削減量を設定している京都議定書の目標達成をより悲観的に見ています。
悲観の原因のひとつには科学や工業が発達し、環境破壊が進み止められずにいる結果にあるのかもしれません。工業の発展と自然や健康の循環は相反するものと思えます。個人の心身の健康は良い食べもの、豊かな自然なくして実現できませんから、現状を見て若者が悲観的な気持ちになるのかもしれません。
はたしてそればかりなのでしょうか。
産業と環境の問題は以前からいわれており、環境に配慮する努力が行われてきました。
たとえば最近では、液晶、プラズマに続く次世代のディスプレイである有機ELディスプレイがあります。面に塗布した有機物に電圧を加えて、有機物自体が発光するシステムを利用しています。すでに携帯電話などで実用化しており、ディスプレイだけでなく照明にも活用される見込みです。発光効率が良いので消費する電力が少なく、有害物質をあまり使用しないのでリサイクルしやすいといわれています。 この有機ELディスプレイに、一世を風靡したナタ・デ・ココが使われる見込みだそうです。 ココナッツの汁にナタ菌という微生物を添加すると、ナタ菌が食物繊維であるセルロースを形成し、あの独特な食感の厚い膜ができます。ナタ・デ・ココのセルロースは透明度が高く、柔軟で熱に強いという特性を持つため、紙のように曲げることのできる超薄型を実現できたそうです。
そして化石資源が使われ、生活に欠かせなくなっているプラスチック。
あと数十年で枯渇するともいわれている、化石資源の代替として未使用の稲わらや麦わら、生ゴミや家畜排泄物、糖質や油脂を含む資源作物を利用する方法がとられています。
主流はとうもろこしなどの穀物を利用するバイオマスプラスチックです。植物の糖質を発酵するなどして得られます。
リサイクルしやすく、地中で微生物によって分解される利点があります。生分解すると地球温暖化の原因であるCO2を排出しますが、植物が大気中のCO2を固定してまたでんぷんをつくるので、理論上は大気中のCO2を増やさないカーボンニュートラルであるといわれています。
ただ、製造過程で化石燃料を使用する点、とうもろこしなど原料の食糧との競合等、乗り越えなければならない問題はたくさんあります。
自然とのバランスはとれていませんが、工業発展と自然保護を止揚する新たな方法を模索し続けています。
環境省から出ているデータによると、日本のCO2排出量は1990年より約8%上回っていますが、産業部門のCO2の排出量は1990年よりも3.5%下回っています。排出量に占める割合は少ないものの、家庭部門は1990年比で31%増です。今までの努力を続けることはもちろん、やはり一人ひとりの行動が重要なのです。
アンケート結果は人々の努力の過程を現実的に受け取れていない表れなのかもしれません。過程が実感できれば、今やらなくてはならない、今やれば将来につながるという楽観意識をもてそうです。
将来につながる楽観性は、家庭の食卓で育めるスタンスです。核家族化などにより子どもは大人と一緒に食事をする回数が減り、こ食が蔓延し、生き物である食物への感謝や人やモノとの関わりも学ぶ機会が減っています。食べもののルーツもわからず、量産されたものを簡単に買ってきては簡単に捨ててしまいます。人生の鋳型をつくる時期に、結果にともなう過程が省略されてしまっているのです。環境に配慮した行動をするとともに、子どもと楽しく食卓を囲み食を教えることは、今すぐできる将来への種まきなのです。
豊かな自然の中にできた食べものを自然な形で食べ、服やフォークが土となり、また食物を育てる穏やかな未来。今から始めれば実現できること、何事にも過程があり、地球も、世代も、自分の体も循環していることを知っていれば、将来の予想は明るいものになるのではないでしょうか。
いまワイン業界の新しい風として、自然派ワイン(ビオワイン)なる物が造られています。
1950年代以前はブドウ畑に用いる除草剤、殺虫剤、農薬や化学合成肥料、ワイン醸造では酸化防止剤等の科学的物質を使用せずに自然酵母によるワイン醸造が行われてきました。しかし、ワインマーケットが拡大し需要と供給のバランスが崩れ、近代の醸造技術を駆使し量産されると新しい味わいが生まれ、それらが主流となりました。
そのような現状の中、ここ10年の間に新たな生産者が多数ワイナリーを設立し、ブドウ本来の味わいが自然に感じられるワインが造られており、日本では自然派ワインと呼ばれています。