生物は輝いています。私たちの体も、食べものも。
比喩的な表現ではありません。私たちの体が光を放っていることが、科学的に研究されています。
この光は生物フォトンと呼ばれ、蛍や月の1億分の1、星の100万分の1ほどの微弱なもので肉眼では見えず、特別な装置を使って計測されます。
たとえば、成長中で細胞分裂が活発な大豆の芽は強く光っています。たばこを吸っていた人の指先は他の部分より強く光ります。植物に傷をつけると傷にそって輝きます。
では、生物フォトンはどのようなメカニズムで光っているのでしょうか。
蛍や発光微生物などの光り方とは違います。蛍は酵素やエネルギーを使って、ルシフェリンという物質を発光させるシステムを持っています。
一方の生物フォトンの発光のメカニズムは複雑で全貌は解明されていませんが、何らかの理由で物質がエネルギーをたっぷりふくんだ状態になり、多くは熱として放出されるものが、一部光となって放出される現象です。フォトンの発生には活性酸素が関わっていることがわかっています。活性酸素は体内で栄養素からエネルギーを作り出す過程で発生する、まわりのものを酸化させやすいために毒性が強い反面、殺菌効果もある物質です。体内の、活性酸素を除去するビタミンCなどの抗酸化物質が不足すると増えすぎてしまい、疾病や老化の原因になるといわれるものです。
生物フォトンはエネルギー生産に伴っているため、生命活動を行っているものは皆、光っているといえるのです。
生物フォトンはメカニズムや役割を解明したり計測するため、1986年?1991年に国家的なプロジェクトとして研究され、その後食品の品質評価、農業、医療とさまざまな分野で応用されるよう研究が進められています。
食品の品質評価では、たとえば焙煎ごま油。
油の劣化は酸化によって起こりますが、従来の過酸化物を測定する評価方法は他の食用油では1日以内で終わるところを、ごま油は強力な抗酸化作用をもつために7?10日かかってしまい、早くて簡便な計測方法が必要とされていました。
焙煎ごま油の抗酸化作用はセサモールなどのゴマリグナンという物質のため。品質劣化の初期にゴマリグナンにより酸化が抑えられて発光が減少することから抗酸化性を計測し、品質を4時間で評価することができるようになりました。
農業の面では、植物の生物フォトンを知ることで植物の状態を把握することができ、今までは事後に対処していたものが未然に対応できるようになるといわれています。また、植物の状態から環境を知ることもできるようになります。
医療の面では、がん細胞は生物フォトンを強く発していたり、腎不全患者の血漿中には活性酸素と反応すると発光する成分がふくまれていることがわかり、診断に大きく役立つといわれています。レントゲンやMRIのように断層画像として生物フォトンを検出する、光CTの研究もすすんでいます。複雑なメカニズムをもつ生物フォトンの画像から有用な情報を読みとるにはいろいろな検証が必要ですが、今までとは違った観点から体がわかるようになり、新しい病気の診断や病態の解明につながるのではと期待されています。
生物フォトン研究はまだいくつか克服しなければならない問題もありますが、多くの新しい情報を得られる可能性があります。
そして先人は知っていたような、食物は生きていて、潜在的な力を持っていることを目の当たりにできるようにも思えます。古い野菜と新鮮な野菜を傷つけて生物フォトンを比較すると、古い野菜は始めこそ強い光を放つものの、やがて輝きを失って枯れていきます。新鮮な野菜は淡々と輝き続け、傷を癒していきます。有機栽培のものと一般農法のもので輝き方が違うという研究もあります。
技術の発展を待つとともに、食べものを大切にし、ていねいに選ぶことを認識していきたいものです。安全で安心なおいしいものを食べることは、体も心も、目には見えない優しい輝きを増す方法なのかもしれません。
ごま油の色は原料胡麻を焙煎することにより生まれ、焙煎の温度と時間により、淡いものから濃いものまで変化します。
また、焙煎の程度が強くなるに従って、苦味が加わります。
ごま油の香りも同様に焙煎の温度と時間により、柔らかい香りから強い香りに変化します。香りは強さだけでなく、その質によって「いり胡麻臭」「焙煎臭」「こげ臭」に分ける事ができます。
また、胡麻を焙煎せずに生のまま搾り、軽い精製をかけることにより、あえて色と香りを抑えて胡麻の旨みを最大限に引き出した、用途の広い生搾りごま油もあります。