あじさいを濡らす雨の、しとしとした水の音が耳に心地よい季節となりました。
花より団子と言わんばかりに旬の鮎を骨ごとバリバリ食べると、あごにほんのり疲れを感じつつ味と食感を楽しめるものです。
よく噛むことは脳が刺激されて発達がうながされたり、唾液がよく出て口の健康が保たれたりと良いことなのですが、人間があごを多く動かすのは、他の動物に比べてあごが弱いためといえます。
なぜ人間のあごは弱くなったのでしょうか。
人間のあごの退化は直立二足歩行をし、骨格的にあごを小さくせざるを得なかったために起こりました。直立歩行をすることで、あごの退化、腰痛、不安定な歩行など様々なリスクを負いましたが、ひきかえに発達した脳を支えられる体を手に入れたのです。
直立歩行は300万?400万年前に始まったといわれ、その後急激に脳が発達したと考えられます。人間が直立歩行をしたきっかけは諸説ありますが、どれも決定的な証拠は見つかっていません。
よく知られている仮説は、森から出て草原を横切る時に直立歩行を始めたというサバンナ説・モザイク説。そして樹上で生活する中で直立歩行を取得したという新説が今月発表されています。
そしてもう一つの仮説、アクア説について今回は触れてみることにします。
アクア説は訳すと「水生類人猿説」となります。敵に地上を追われたり、食料を求めるなどして水の中で生活を送った結果、水中で顔を出しやすく泳ぎやすい直立歩行など、現在の人間の特徴を取得したとする説です。
物的証拠は見つかっていませんが、仮説の根拠はいくつかあります。
まずは人間はチンパンジーなど他の類人猿に比べて毛が少なく、皮下脂肪が多いということ。イルカやアザラシなど、水生生活を送る生物に多く見られる特徴です。地上の暑さは毛がないと耐えがたいものですが、水中で体温を保つには脂肪が多いことが有利です。人間の体毛の生え方は泳いだ時にできる水流の流れと一致し、脂肪は水によく浮きます。
そして水中に生活を求めるとなると、当然魚介類をよく食べるようになります。
人間の脳が急激に大きくなるためには、食物の中の二つの脂肪酸をバランスよく食べる必要があります。そのうちの一つの脂肪酸は聞きなじみのあるDHAなどで、陸上の食物にはほとんどふくまれず、魚に多くふくまれるのです。魚を食べないと脳は発達できません。
その他アクア説の根拠には、人間は水中に入ると心拍数が下がり、酸素を節約する潜水反射があること、生まれたての赤ちゃんは泳げることなど様々あります。
人間はかつて、今以上に水と親しんでいたのかもしれません。なぜ海を眺めたり、水の音を聞くと心休まるのか。考えてみるとロマンがあります。
人間は脳を発達させるために直立歩行を始めたわけではなく、地球を生き抜くため、環境に合わせて直立歩行になりました。そして人間は弱くなったあごを動かすことで脳を刺激し、言葉を発しやすい喉の構造を得て言語を使い、魚を食べることでDHAなどを得て脳神経をつくる材料を整え、その結果脳が発達し、地上の覇者となったともいえます。
魚ばなれがすすみ、やわらかいものばかりを食べがちな現代。人間を生き永らえさせた脳を使い、環境に合わせて生きることこそ、繁栄をもたらすのではないでしょうか。
まずは旬の鮎の肉を、脂を、骨を噛みしめる一口の意味を、数百万年の時を超えて考えてみるのも良いかもしれません。
キシリトールは、白樺や樫などの樹木から採れる天然素材甘味料で、フィンランドやアメリカ等で生産されております。歯の健康に関する研究は、意外と新しく1970年にフィンランドで開始されました。
研究の結果、キシリトールには、虫歯の原因となるミュータンス菌の働きを妨げ、弱らせる働きがあることが分かり、1975年にフィンランド、アメリカでキシリトール入りチューインガムが発売されました。
日本では、1997年に厚生省(現・厚生労働省)よりキシリトールが食品添加物として認可され、その年にキシリトール入りチューインガムが発売されました。今では、市販されているチューインガムの約半分は、キシリトール入りのものとなっています。