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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.8

キューブ味のスープ

「立方形の味のするスープだなあ」
トマトとナスとオクラをいれたさわやかなスープをたしなんでいる時に、一緒に食事をしている人がそうつぶやいたら皆さんはどう思うでしょうか。丸い味ならまだわかるけど…と、少し不思議な感性を持っている人だと思うかもしれません。

多くの人々は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚をそれぞれ独立させて感じています。目がものを見て、耳が音を聞き、舌が味を感じます。
ところが、同時に複数の感覚を呼び起こす「共感覚」をもっている人々が存在します。

たとえば音から色を見る人は、ベルが鳴るとまぶしく赤い光が見えたり、音楽を聴くと鮮やかな色彩が見えたりします。多くの共感覚者はこの聴覚刺激から視覚が呼び起こされる「色聴」と呼ばれるもので、まれに嗅覚から視覚、味覚から触覚などさまざまな組み合わせの共感覚を持つ人々がいます。
字に色を感じる人は、Aは黒、Eは白、Iは真紅に見えたりします。数字に色を見る人に幾何学的に2と5を並べた図を見せると、多くの人は20秒ほど判別に時間がかかるところを、彼らは瞬時に見分けることができます。

そして味に形を感じる人の感覚から、食を表現する新たな一面を見いだせそうです。
共感覚をもつある芸術家の例です。彼は料理をするとき、砂糖で丸みをもたせたり香辛料で表面に穴を開けたりして、おもしろい形にするそうです。料理を味わうときがまたユニークで、複雑に何層にもつくりこまれた味の、平らな円形からとがった三角柱へと刻々と形が変化するさまを楽しみ、ときに生きているような有機質で、巻きひげがついているといいます。彼はこの一連の表現は比喩ではなく、手の中に、顔面に、肩に、目には見えなくともはっきりと形を感じているそうです。共感覚は個人によって感じ方は異なるので彼の独特の感触です。

共感覚は幻覚や想像とは違います。メタファーでもありません。自分の意思とは関係なく、強制的にはっきりと感覚を呼び起こされます。精神病や神経病、薬物使用がないか、心理学的なチェックもして、問題がなければ共感覚者とみなされます。

では、なぜ共感覚をもつ人々がいるのでしょうか。
人間はたくさんの利用していない脳細胞を持って生まれてきますが、 まもなく多くが死滅していきます。脳の感覚機能は視覚野、聴覚野とわかれているものですが、共感覚者は感覚同士のバイパスが淘汰されずに残っている可能性があります。遺伝的要素の強いものです。そのため、人間は皆生後三ヶ月ほどまで共感覚をもっているといわれています。
そして、私たちは知らず知らず共感覚を使っているともいえます。
たとえば実験で、ギザギザの割れたガラスのような図形となめらかな丸みのある図形を見せて、名前をつけるとしたらどちらが「キキ」でどちらが「ブーバ」かと問うと、98%の人が前者を「キキ」といいます。これは図形と音を結び付けている共感覚といえるものです。

普段私たちは、いくつかの感覚をそぎ落としているのかもしれません。先入観や科学的知見に偏り過ぎるのは感性を多少なりとも鈍らせるものです。特別な共感覚をもつ人々の存在を知ると、この世界を皆が同じように認識しているのではないことがわかり、自分と他との感じ方の差異に寛容になれるように思えます。

キューブ味のスープを味わっている人は共感覚を持っているのかもしれないし、スープに使われているブーケガルニの香りから森を、森から木を、木から四角い箱を連想したのかもしれません。
誰かと一緒に豊かな感性で感想を言いながら料理を楽しむ醍醐味。
自分にはない感覚を知り、示された可能性を味わいに探してみると、新たな気づきにつながるのではないでしょうか。

ブイヨンとコンソメの違いって??

ブイヨンとコンソメの違いをご存知ですか?日本人には同じような意味に捉えられていますが、実は大きな違いがあります。

ブイヨン(Bouillon)とはフランス語で『だし』のこと。和風料理に昆布や鰹節でとっただしがあるように、洋風料理では牛骨や香味野菜からじっくり時間をかけてとったブイヨンが欠かせません。一方コンソメ(Consomme)とはフランス語で『完成された』という意味。つまりブイヨンをベースに完成されたスープです。

だしは料理の基本です。
昆布や鰹節からだしをとるのはそれほど時間を必要としませんが、ブイヨンの場合は、鶏がら・牛すね肉・野菜などを弱火で長時間煮込まなければなりません。忙しいときも手軽に本格的な味が出せるスープの素もあります。 ベースがしっかりしていれば、料理はおいしく仕上がります。だしを上手く使いこなすことが料理上手の第一歩です。

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