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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.33

生と死のあいだ

生まれてから死ぬまで、どう生きたいと思いますか?

アニマルウェルフェア(動物福祉)という言葉をご存知でしょうか。 家畜が幸せに生きることを考え、快適な飼育環境をつくることです。

大量生産、大量消費の現代において、生産性を上げるために畜産動物たちは過酷な環境で育てられている現状があります。
ストレスにさらされると、人間と同じように動物も免疫力が下がり、さまざまな病気にかかりやすくなります。 そして薬などで対応せざるを得なくなります。
本来草を食べるはずの牛に、生産性を高めるためにトウモロコシを飼料としている現状が多く、 すると牛は胃に負担がかかり、胃潰瘍になりやすく薬を必要とし、体が強く育ちにくいという話があります。 また、せまいケージにつめこまれ、ストレスや運動不足で健康を害する家畜は多いそうです。

私たちが日々仕事をし、勉強をし、食事をし、趣味を楽しむのは、この生と死のあいだを幸せに生きたいから、 ということもあるのではないでしょうか。家畜にそれを当てはめることに、さまざまな意見はあるかもしれませんが、 良い循環を生むことが期待されます。

EUではアニマルウェルフェア五カ年計画が設けられ、鶏のケージ飼育が2012年までに順次廃止されたり、 雌豚は2013年までに広いスペースで飼育をするといった取り組みがあります。 家畜の品質を示すWQマークが適用されて、良い過程で育てられた家畜であることを表示しています。 アメリカも、2020年頃までに対応をする姿勢を見せており、日本でも理解が進みつつあります。

家畜の飼料や私たちの食料になる植物も同様で、どんな環境でどう育つかも、現在関心が高まっています。 良い土、空気、水と太陽に育てられた植物は力強いものでしょう。 有機栽培、無農薬栽培、自然栽培といったことの本当の理解が浸透しつつあります。

食べものを健康に育てると、安心で安全なものとなり、人の健康にも直接的につながります。 また、良い食べものは良い自然環境なくしてありえません。 良い食べものの生産者は、太陽や土や水の自然の力を理解し、環境を汚さず、守るように努めています。
消費者が良い生産者の思いも食べものの命と一緒に取り込み、適正な価格を支払い、食べものを無駄にせず、 健康になり、そしてきちんとした生産者が支えられるという図式は、早々に確立させなければなりません。

安心、安全なおいしい食べものを食べて、無駄にせず、その食べものを食べることは環境を守ることになり、 自然が美しく、動物に、植物に、自然に、人に対して感謝が生まれ、その思いにそってふるまう。
人間が食べる命の幸福を考えることがエゴイズムだとしても、死が他者の生になる循環の中に生きられたなら、 この人生により幸せを感じられるかもしれません。

人に地球にやさしい
有機野菜、無農薬野菜

有機野菜、無農薬野菜がブームです。
なぜでしょうか?
「安全、安心だから。」「おいしいから。」
確かにそうです。だけど有機野菜、無農薬野菜の良さは、それだけではありません。
一般的な畑では、作物に虫がつかないよう農薬を散布します。こうすることで虫はつかず、 きれいな野菜ができあがります。しかし、それと同時に、農薬は土の中の微生物をも殺してしまいます。 微生物のいなくなった畑は土が固くなり、作物が根から栄養を吸収しにくくなります。 やむを得ず、化学肥料を多く施肥しなくてはならなくなることもあります。 きれいな野菜の陰で、畑も野菜も微生物も泣いています。

一方、農薬に頼らない畑には、微生物がたくさん。彼らの活動で土はふかふか、 野菜たちは思う存分根を生やし、しっかりと栄養を吸収します。葉はすくすくと成長し、たわわな実を実らせます。 人も微生物も虫も共生関係。ちょっと虫食いで、かたちは悪いかもしれませんが、それは環境にやさしい証拠です。

有機野菜や無農薬野菜の人気は、土や虫、人、環境の幸せにあり、安心にあり、 そして素晴らしいおいしさにあるのではないでしょうか。

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