新緑の中を散歩していると、木々の間から光の筋が差していました。空気を白く染める太陽の光は、すがすがしさ、神々しさを感じるものです。
白い色は昔から人々にとって特別な色でした。それは白い食べものを珍重してきたことからもわかります。
米、小麦粉、砂糖、塩…
人々にとって重要な基礎食料は白いものが多いといえます。米などは手間をかけて精製され、白いものほど貴重とされていました。白米はご周知のとおり、銀シャリといわれ高級なものとして扱われ、江戸時代にさしかかるまで白いごはんは貴族や高級武士など、階級の高い人々の食べものでした。
小麦粉は粒が細かくなるほど白くなるので、技術の発展とともに白さを出せるようになりました。現在も冴えた色が出るように調整されます。日本独自の白砂糖である和三盆は高級な砂糖として、手作業でていねいに作られています。
精製の技術が発展していったことからも、白い色にこだわってきた人々の感覚がうかがえます。
では白い色を、人はどうやって知覚しているのでしょうか。白い色のカラクリは二通りあります。
太陽光には人間の目が赤・橙・黄・緑・青・藍・青紫色に感じる波長があり、ものが反射した色の光を網膜がキャッチして、そのものの色と認識しています。純粋な白は全ての色の光を反射して、太陽本来の色を見ていることになります。太陽の光の色に近いものを、人は白いと感じているのです。小麦粉の色はこの原理で見えています。
もう一方のカラクリはどんなものでしょうか。
たとえば牛乳や大根。実は透明なのです。
牛乳は液体の中に脂肪やたんぱく質の粒が分散(乳化)している「コロイド」と呼ばれる性質があります。この脂肪やたんぱく質の粒に光が当たり乱反射して、白く見えているのです。
木々の間から差す光の筋や空に浮かぶ雲も、細かいチリや水蒸気に光が乱反射するという原理で白く見えています。
大根も同様に、大根の中に小さな無数の空洞があり、そこで光が乱反射しています。
ティッシュやすりガラスを濡らすと透明になるのと同じく、大根をおろしたり、煮て中に水が入りこむなどすると一部透明になりますが、大根をコロイドである米のとぎ汁で煮ると白く仕上げることができます。
また、米も炊き上げるとでんぷんの構造が壊れて乱反射を起こし、白くなります。小麦粉が細かくなると乱反射が増して、さらに白く見えます。砂糖や塩はかたまりでは透明で、粉状にすると白くなることはよく目にするところです。
白い色とは、太陽の光をそのままはね返している色、太陽の光を乱反射させてとじこめている色といえます。
太陽は地球にエネルギーを与えてくれる、生命の源。
白い食べものを重んじる心は、太陽の恵みに感謝する心の表れなのかもしれません。
紫色の花を咲かせる穀物、アマ。
アマは地中海地方が原産で、人類がはじめて栽培した植物のひとつといわれ、西暦800年代頃からアマニ(アマの種子)が食用されていたという記録が残っています。その後アマニは欧州全域から米国、カナダにまで広まり、今日に至っています。
アマニは魚の油などに多い、血液をさらさらにするはたらきのあるα-リノレン酸や、食物繊維が多く含まれています。
また、がんや動脈硬化の原因になる活性酸素を抑える抗酸化作用、骨や肌を丈夫に保つ女性ホルモンに近いはたらきがあります。
アマニは欧米ではパンに入れたりと料理などに使われて、広く食卓に普及しています。ドイツでは一人当たり年間1kgを消費しており、日本のゴマの消費量に匹敵しています。